2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、全世界で人々の暮らしが一変しました。感染防止のために、いたるところで「密」を避け、社会的距離を保つこと(Social Distancing)が叫ばれ、普段から私たちは他人との距離や、自らの置かれた空間を否応なしに意識させられています。
隔てなく人と触れあい、集まって活動し、どこでも自由に行き来できた日々がいまでは大きく変化し、多くの場面で制約あるいは自粛が求められるようになりました。気兼ねなく「密」になれた日常は既に懐かしいものとなり、「新しい生活様式」に順応せざるを得ないいま、私たちの周りの空間ではさまざまな試行錯誤が繰り広げられています。
これまで古今東西の作家も、空間というテーマに対峙し、多様な視点からアプローチしてきました。その中でも「疎密」は重要な意味を持ち、作品の性質を決定づける要素のひとつでもあるといえるでしょう。本展覧会では、人のいる風景やだれもいない風景に表れた疎密、余白あるいは 集積といった形で表現された疎密などを作品を通じて紹介し、空間における人やものの距離とそれらの関係について見つめ直します。