長野県上田市郊外にある戦没画学生の絵画を集めた美術館、無言館は1997(平成9)年5月2日に開館した。若くして戦争の犠牲になった画学生の作品ばかりで成り立つ無言館は、1994(平成6)年4月に、館主の窪島誠一郎が画家の野見山暁治とともに遺族のもとを訪ね歩くことから始まった。開館後もその調査と収集は続けられており、現在では130名の約600点が保管・展示されている。
彼らが遺した作品には、恋人や妻、故郷など日常的な風景が描かれている。だが、そこには既に絶筆となることを予想して、生きているその時間を噛みしめるように、ひたむきに制作している姿勢が感じられる。
戦後76年を迎え、戦争を語り継ぐ世代がますます少なくなってきた。画家への志半ばで戦地に赴いた若者たちが残した作品は、現代の私たちに何を問いかけるのか。未公開を含む戦没画学生たちの命の証、約130点。