池内晶子の美術館での初個展です。
その作品に用いられるのは絹糸のみで、池内は丹念な作業を積み重ねて糸を結びあわせ、帯や紡錘状のかたちをつくり、空間にはりめぐらせます。工業製品の絹糸は、近代化の歴史や服飾にまつわる文化についての記憶を呼び起こします。またミニマムで繊細な造形は、それが置かれた内部空間のみならず、外部にある地勢や自然の力を、さまざまに想像させるでしょう。あるいは池内は絹糸をつたって、地のちからをあつめているのかもしれません。
今回は展示室を大胆につかい、ほぼ現場制作による新作を発表します。池内は事前にリサーチを行って美術館と周辺地域の特性を理解し、展示空間に凝縮させようと丁寧に準備しています。しなやかで強靭な世界のいっときのあらわれを、どうぞ心待ちにしてください。