「私は、福富太郎という人は、間違いなく戦後最高のコレクターだと思っています。」
―本展監修者・山下裕二氏(美術史家・明治学院大学教授)
昭和の「キャバレー王」として知られた福富太郎(ふくとみたろう)(1931-2018)は、戦後の高度経済成長とともに全国に店舗を展開し、実業家として成功をおさめました。また、テレビやラジオ番組に出演し、その軽妙でユーモアあふれる語り口が人気を博し、キャバレー太郎の異名をとりました。
その一方で、浮世絵や美人画をはじめとする近代日本絵画、さらに幼少期の体験に基づく戦争画などの美術品を長年蒐集し、「福富太郎コレクション」を築きます。そして、美術雑誌の連載をはじめとする著述や講演をとおして自身の愛するコレクションを紹介し、美術品の魅力を広く人々に伝えることに力を注ぎました。
本展覧会では、蒐集のきっかけとなった日本画の鏑木清方(かぶらききよかた)を代表とする美人画をはじめ、明治の黎明期から昭和の戦時下にいたる洋画まで、彼がこよなく愛した絵画80点余りをご覧いただきます。生前の福富太郎と深く交遊した山下裕二氏(美術史家・明治学院大学教授)の監修により、コレクターとしての審美眼に焦点を当てながら類稀なるコレクションの全体像をご紹介する初の機会です。