美術家が美術作品を発表する舞台は、美術館だけとは限りません。美術家によって制作される作品も、普段見慣れている絵画や彫刻ばかりではありません。
ダン・グレアムが、作品を発表する舞台は、雑誌上や公園の中など、あらゆる人々に開かれた公共スペースが中心で、制作する作品はユーモアに富んだ思考の迷路といえます。彼の作品を楽しみながら行き来することで、人間社会のカラクリが見えてきます。そこには一貫して、私たちが見過ごしてしまうような社会の仕組みを浮かび上がらせようというテーマが読み取れます。
この展覧会では、グレアムの最初期から近年までの展開を一望でき、さらに本展のために制作された新作のパヴィリオンを体験できます。他にも、ロック音楽が持つ宗教性をテーマとした映像作品を上映する、関連するレクチャーの開催、彼のプロフィールを紹介した漫画を無料配布するなど、数多くの見どころを備えています。