コレクター上原昭二が半世紀以上をかけて集めた絵画コレクションには、画家たちのユニークな物語やエピソードをもつ作品が集まっています。それらの中には、作家同士の交流が育んだ作品だけでなく、過去や同時代の作品との出会いによって制作されたものも数多くみられます。本展では、こうした絵画の生まれるきっかけとなった画家や作品との出会いが紡いだ物語を、モネたち印象派の作品などからご紹介します。
印象派を代表する画家クロード・モネは、葛飾北斎や歌川広重らの浮世絵を通じて日本の富士山を知り、日本らしさを代表するこの山への憧れを抱いてきました。そうした思いは、ノルウェーに滞在した折に、雪の積もるコルサース山を富士山に見立てた連作として結実します。当館が所蔵する《雪中の家とコルサース山》もそうした連作のひとつであり、モネが愛蔵した北斎『富嶽三十六景』などの浮世絵は、彼が新たな作品を生み出すきっかけとなりました。こうしたエピソードは、作品に秘められた背景を明らかにし、モネが雪山に込めた日本への深い愛着を我々に教えてくれます。
本展示ではそのほか、ルノワールがモネとともに印象派絵画の表現を模索した《アルジャントゥイユの橋》、ゴッホが私淑したミレーの版画を模写した《鎌で刈る人(ミレーによる)》、ドランがセザンヌ風の色彩と造形を試みた《レ・レックの森の中》などから、絵画が紡いだ物語をお楽しみください。