皆さんが美術館を訪れた時、多くの場合、お目当ての展覧会や作品のことは強く印象に残っても、その美術館そのものがどういうところなのか、については詳しく触れる機会が少ないのではないでしょうか。当たり前のようですが、一つとして同じ美術館は存在せず、それぞれに特色やストーリーがあります。本展は、開館38年目となるいわき市立美術館が、どうやって設立され、どのように歩みを進めてきたのかを、収集作品=コレクションと資料群=アーカイブから紹介するものです。
いわき市立美術館は、1984年の開館から、「戦後の現代美術」と「いわきゆかりの美術」を収集方針に掲げてきました。公立美術館による現代美術の収集がそれほど一般的でなかった当時、「現代美術は分かりにくい」という声も寄せられ、学芸員たちは苦心して普及にあたりました。その後も一貫して方針を守りつつ地道な収集が行われた結果、現在では収蔵作品は2,300点を超え、私たちが生きる時代と結びついた、現代美術の様々な動向をそこに見出すことができます。本展の作品展示では、コレクションから90点余りを選び、「写真、記録、記憶」「絵画、あそび、日常」「もの、時間、自然」「美術館を抜け出して」といった身近な視点でその面白さに触れます。
また、当館の開館には、「いわき市民ギャラリー」というユニークな市民団体が密接に関わっていました。当時の記録を紐解くと、市町村合併により誕生した「わかいまちいわき」の文化を盛り上げようと奔走した市民たちの姿がよみがえります。本展のアーカイブ展示では、そうした美術館の開館の経緯や、その後、時代や地域の特色を反映して展開された美術館の活動の様子を、写真やチラシ、ポスターなどの資料で辿ります。本展が、いわき市立美術館をREVISIT(リビジット)(再訪、 再考)し、これまでの歩みと、これからの未来像を考える契機となれば幸いです。