2020 年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、発生から1年以上がたった現在も収束の兆しが見えないままです。世界中で人々の日常はすっかりその姿を変えてしまいましたが、日本はもとより地震や台風などの自然災害が多く、いつ日常が脅かされるかもしれない不安や緊張と隣り合わせで過ごしてきた人も多いでしょう。
本展覧会は、私たちが意識せざるをえなくなった「日常」について、今一度見つめ直すものです。そもそも日常を日常たらしめているものは何でしょうか。生活の中のちょっとした習慣や日課、家族や地域の中で共有されている約束ごと。とりたてて変化のない時間の流れや風景。しかしながら、当たり前に繰り返されている営みであっても、人によって、家族によって、異なる個々の日常が紡がれています。本展では、意識しないと見過ごしてしまう生活のなかのささやかな創造行為に着目した作品や、突然の喪失や災害に向き合う心の機微を捉えた作品、そして形を変えて続いていく日常をあらわにする作品を介して、日常と非日常のあわいにある「現在(いま)」を浮かび上がらせます。