昭和初期、ガラスといえば食器や板ガラスなどの実用品や、硬質な切子ガラスなどの生産が一般的でした。そこで岩田藤七(いわた とうしち 1893-1980)は、宙吹き技法による熔けたガラス特有のやわらかな造形に豊かな色彩をまとった作品を発表し、日本のガラス工芸を芸術の域にまで高めました。さらに、長男の久利(ひさとし 1925-1994)は、研ぎ澄まされた感性と豊富な化学的知識により色と光が織り成す華麗な作品を作り上げ、久利の妻の糸子(いとこ 1922-2008)は、藤七が興した岩田工芸硝子株式会社を受け継ぎ、自らもガラスの装飾壁画や大皿などを制作しました。本展では町田市立博物館のコレクションより、近代日本のガラス工芸史の礎を築いた岩田藤七・久利・糸子の作品約100点をご紹介します。