人間と石の間には長い歴史があります。人間は石を加工し、色々な物を作り出してきました。さらに、仏像や石塔などの対象物も石で製作し、信仰の対象となっています。それらの中には美術品ともいえるものもあります。
わが国では石を素材として加工したもののほとんどが、仏教とその信仰を基本としています。それらは石塔や石仏、石燈籠など25種ちかくに分類されています。石造美術の研究者、故川勝正太郎氏は総合研究の名称として石造物に石造美術という用語を用いました。また、近年では、石造遺品、石造文化財、石造物という用語を使用する研究者の方もおられます。現在、各地で徐々に石造文化財に目が向けられるようになってまいりました。それと共に石造文化財の保護に関心が向けられるようになりました。
石造物は、石造美術品としての評価と共に考古資料として、また歴史資料として位置づけられています。
今回の企画展では、従来からあまり光のあてられていない土佐の石仏や石造塔婆などを取り上げてみました。石造塔婆は、地表に造立された信仰の対象物です。展示室へ移動させることには、かなり無理があります。そこで、石仏や石造塔婆の拓本や写真、一部実物資料を展示し、土佐の石仏や石造塔婆を紹介し、忘れられつつある石造文化財に関心をもっていただきたいと考え企画致しました。これを機会に地域の石造文化財の保存にも目を向けていただければ幸いです。