第二次世界大戦のさなかに生を受けた平松画伯は、激動の時代の中で日本人のアイデンティティを模索する青年時代を過ごしました。「片肺に西洋画志向を置き、片肺に日本画とか書を置き」という矛盾する思いを抱えながら、西洋画一辺倒の戦後の美術教育に対する疑問を感じていた画伯は、反発するように日本画家の道に進みます。
29歳の時に取材で訪れた韓国で、自然と人間が一体化したような墓-土(ど)まんじゅうに感銘し、人の生と死や東洋人としての生き方の原型について、自身の作品に表現するようになります。その後も中国、インド、ベトナムとアジアの国々を行き来し、それぞれの国の文化に触れながら日本の文化のルーツを探る旅を続けました。
今回は、アジアを巡る旅の中で出会った風景や人々を描いた素描を展示します。これらの素描には、画伯の異国の文化に対する尽きない興味が感じられ、本画作品とは違った素直な感動が伝わってくるようです。