若き日の弘法大師空海(七七四~八三五)は延暦二十三年(八〇四)に密教を求めて中国・唐に渡り、帰国後の弘仁七年(八一六)に高野山(和歌山県)を真言密教の根拠地と定めました。以来、高野山は政治の中心地から常に一定の距離を隔てた山岳霊場だったこともあって、戦乱に巻き込まれることもなく、仏教の聖地として今日まで連綿と人々の信仰を集め続けています。この間、高野山には密教美術はもちろんのこと、宗派を超えた仏教美術の名品が数多く集積しました。空海が入唐してからちょうど千二百年目にあたる平成十六年(二〇〇四)の春、あらためて弘法大師空海と高野山の歴史を振り返るとともに、総本山金剛峯寺をはじめ、高野山一山に花開いた仏教美術の全貌を紹介します。国宝・重要文化財約百二十件を含むおよそ百五十件の至宝を一望できるまたとない機会となるでしょう。空前の規模と質を誇るこの展覧会を心ゆくまでご堪能ください。