ベルナール・ビュフェの描いたさまざまな「もの」、モチーフやテーマに焦点をあてた展覧会です。
開催中は、本館・新館あわせて、当館のベルナール・ビュフェ作品から100点以上をご覧いただけます。
ベルナール・ビュフェの世界をたっぷりお楽しみください。
長いあいだ「絵」といえば、姿のあるもの、目に見えるものを描くことであった。しかし20世紀初め、「具体的なものの姿を描き写すことをしない」抽象絵画が登場すると、ものの姿を描いた絵は「具象絵画」と呼ばれるようになった。第二次世界大戦後には、新たな抽象表現が世界各地で同時多発的に生まれ、時代の流れは具象から抽象へ、そして芸術の発信地はパリからニューヨークへ移りつつあった。ベルナール・ビュフェが画家としてデビューしたのは、パリの美術界が大きく揺らいでいたそんな時代である。
抽象と具象があたかも対立するもののように扱われた当時、抽象の趨勢に対抗すべく具象の新しい力を求めていた人々は、若き具象画家の登場を歓迎し、スターへと押し上げる。ビュフェ自身も具象にこだわり、生涯を通じてありとあらゆる「かたちあるもの」を描き続けた。
しかしあるインタビューで「抽象絵画をやってみようと思ったことはないのか?」と問われたビュフェは、こんな風に答えている。
ありません。絵画作品はすべて“抽象”です。
具象絵画は誰にでも理解できるものでなければならない。同時に、そこに人々が何かを見出すことができなければならないのです。
すべての芸術が“抽象”であるというのは、この意味においてです。
ビュフェの作品に、今の私たちは何を見出すのだろうか。
ビュフェの描いた「かたちあるもの」をあらためて見つめ、そこに私たちが何を見出すことができるのか、それぞれの作品と向き合ってみたい。
本館(大展示室を囲む左右回廊および中展示室)では、ビュフェの画家デビュー前、そして19歳で批評家賞を受賞して一躍注目を浴びるようになった1940年代後半から1950年代の作品や資料で、「ベルナール・ビュフェ」を生んだ時代の空気をお伝えしています。