三代歌川豊国(歌川国貞)と歌川広重といえば、江戸時代後期~幕末期に活躍した浮世絵師の中でも、特に人気のあった絵師たちです。嘉永6年(1853)に刊行された番付には、同じく歌川派の国芳と共に「豊国にかほ、国芳むしゃ、広重めいしょ」とうたわれました。
三代豊国、広重、国芳の3人は、弘化年間(1844-48)以降、しばしば共同で作品を制作、発表しました。このような作品は「合筆」といわれ、特に三代豊国と広重は数多くの合筆作品を残しています。今回ご覧いただく《双筆五十三次》では、前景の人物画を三代豊国が、背景のコマ絵を広重が担当しています。一人もしくは二人一組で描かれた人物の表情は皆生き生きとしており、また役者絵を得意とした三代豊国らしく、いくつかの図には役者似顔で描かれた人物も見られます。一方、広重の手になるコマ絵は、俯瞰(ふかん)構図を多く用いてあっさりと仕上げられており、前景の人物を邪魔しないための配慮がなされています。本揃物は、二人の絵師の特長を生かしながらも調和の取れた良品といえます。
歌川派の絵師たちが一世を風靡(ふうび)した時代、中でも三代豊国と歌川広重という二大人気絵師による東海道シリーズは、さぞかし世間の人々を喜ばせたことでしょう。このたび当館初披露となる豪華コレボレーション作品を、皆さまもどうぞお楽しみください。