強靭な精神力に裏打ちされた、独創的な絵画を東国に多く残した雪村(せっそん)。
その作品には、その前に立つ者を、瞬時に、異次元の絵画空間へ拉し去るような力強さがあります。本展では、「呂洞賓(りょどうひん)図」に代表される当館所蔵の雪村作品全7件に、京都国立博物館所蔵の「琴高仙人(きんこうせんにん)図」をはじめとする特別出陳作品3件を加え、その魅力に迫ります。
雪村は、16世紀という動乱の時代に常陸(ひたち)に生まれ、禅寺に入って絵筆をとる画僧となり、八十有余年におよぶ生涯を東国(とうごく)で全(まっと)うしました。生没年すら確定できませんが、一度も都に上らなかったことが知られています。本展では、雪村以前の中世禅林の初期水墨画や、雪村と同時代に生き、都で活躍した狩野派などの作品とともに、雪村の絵画を展示し、その独創性にあらためて注目します。
400年以上たった今も、古びることのない雪村の画業を、どうぞこの機会にお楽しみください。
(担当 泉万里)