本展覧会では、当館所蔵品の中から旅にまつわる作品をご紹介します。旅人の姿は、『伊勢物語』の主人公を筆頭にいくつも絵画化されてきました。物語の場面を描いた作品では、住み慣れた土地を離れている寂しさや、日常では見かけない事物を目にする喜びなど、私たちも身に覚えのある感情が表現されており共感を誘います。
また、旅先の美しい景物や、旅人で賑わう名所を描いた作品もたくさんあります。展覧会では、絵師が旅をしたからこそ生まれたといえる絵画も展示します。色彩や構図にこだわって描かれた作品の数々は、実際に美しい風景を目にした際の感動を、現代の私たちにもみずみずしく伝えています。
旅を想起させる美術品を眺める楽しみのひとつは、この場を離れなくとも旅の情趣を味わえることでしょう。昔の旅人たちに思いを馳せつつ、旅をするような気持ちでお楽しみください。 (担当 仁方越洪輝)