幕末から明治へと移り変わる時代は、日本の歴史の上で政治や文化の大きな転換期であり、美術の世界においても日本洋画の誕生という画期的な出来事がありました。
日本人と西洋絵画との出会いは16世紀後半の桃山時代、キリスト教伝来に伴う聖画や南蛮屏風にまで遡りますが、徳川幕府による鎖国政策でその潮流は途絶えました。しかし、江戸後期になると蘭学を中心に再び西洋の文化がもたらされ、洋書の挿絵や銅版画などに触発された当時の画家たちは、写実的な洋風表現を手探りで試みるようになります。さらに明治維新後に油彩画が日本へ導入されると、あたかも現実をそのまま写し取ったかのような迫真性に強い衝撃を受けた画家たちは、試行錯誤を繰り返しながら、新たな表現方法の獲得を目指して歩みだしました。
本展では、初期洋画の宝庫と評される山岡コレクション(ヤンマーディーゼル創業者の山岡孫吉による収集)を中心に、日本洋画の父と言われる高橋由一、五姓田義松をはじめとして、黒田清輝、藤島武二、青木繁など、笠間日動美術館が所蔵する日本洋画の礎を築いた巨匠たち70余名186点の作品を一堂に集め、幕末から明治にかけて形成された日本近代洋画の興隆期を振り返ります。