岡本太郎は多くの旅の中で、民俗学的な視点から、日本や世界の文化とその土地に暮らす人々の生命力の源流を探りました。1957年から1966年にかけて岡本は東北から沖縄まで日本各地を巡り、その取材旅行をもとに『日本再発見―芸術風土記』や『神秘日本』『忘れられた日本(沖縄文化論)』を執筆しました。また、1963年にはメキシコに初めて訪れ、それを機に世界各地を巡った記録をエッセイ『美の世界旅行』として刊行しています。
岡本は取材先でいつも一眼レフカメラを持ち歩き、自身で撮影した膨大な写真の一部を著作に掲載しました。道行く人々や街並み、路傍の石像、祭りなど、岡本の捉えた風景は色褪せない新鮮さを持ってその土地の生命力を伝えてきます。
本展では岡本が主に取材で訪れた旅先を辿りながら、写真を中心に、同時期に制作された油彩や彫刻、取材旅行をもとに執筆した著作などを紹介します。「世界ととけあうこと、それが旅である」と述べた岡本の旅と芸術に触れていただく機会となれば幸いです。