生まれ育った土地、住んだことのある町、なじみ深い場所から生み出されたものは、時に私たちの誇りとなり自信や可能性を与えてくれます。
本展では宇城市出身のデザイナー上原史寛氏の作品や制作姿勢を紹介し、誰もが地域の魅力を発見できるヒントを探ります。
上原氏は企業や商品を紹介するグラフィックやロゴをはじめ、地元の生産者や地域づくりに関わるデザインを数多く手がけ、身近なものが持つ魅力を発信し続けています。制作に通底しているのは、デザインを必要とする相手の思いを知り共感することから始める姿勢。原石が特徴を生かしたカットによって宝石へと姿を変えるように、上原氏も対象への深い理解から潜在的な輝きを引き出していきます。
上原氏が宇城市からの依頼で制作した松橋駅周辺マップとパンフレットはその好例でしょう。地元の人への聞き取りをもとに昔の町の話題を取り入れた地元密着の内容で、普段から駅周辺を利用する人が楽しめるものです。昔と今の人々の思いをつなぎ、世代を超えた会話を生み出すきっかけにもなっています。
会場では上原氏がこれまでに取り組んだプロジェクトや作品の紹介に加え、地元の画家たちが描いた故郷の風景画も展示します。
日常とともにあることの中に、今まで気づかなかった驚きや感動を覚えることがあります。それは、対象への向き合い方を少しだけ変化させてみることで生まれるものかもしれません。今回の展覧会が、身近なものに新たな輝きを見つけるきっかけになれば幸いです。