明治末から昭和初期にかけて萬鉄五郎が画家として新たな地平を切り開こうとしたこの時期は、まさに日本の近代絵画が前衛的造形的思考を受容していった揺籃期と符合します。萬は多くの先鋭的な表現を試み、その作風は後期印象派からフォーヴィスム、未来派や抽象表現、そしてキュビスムなど、多彩で独創的な造形性を示し、大正期の日本洋画をリードした第一人者といえます。萬鉄五郎記念美術館では、萬を多面的にアプローチすべく同時代の画家たちの作品を取集し、多面的な萬検証に努めてきました。
この度、萬鉄五郎の画家としての軌跡を明らかにすべく、彼の生涯に亘る足跡をたどるとともに相互に影響しあった同時代の画家たちの作品で、表現者としての萬の歩みを紹介したいと思います。