視ることへの想像力をかきたてる、不思議な箱
実物や本物を“みつめぬく”ことで得られる楽しみがあります。急速にデジタル化する社会の中で、ともすると私たちはそのことを忘れがちです。試しに身近なものに新たな視線を投げかけてみれば、寡黙なモノたちが様々な情報を発していることに気づきます。
「画材と素材の引き出し博物館」は、美術作品と鑑賞する人を結ぶために目黒区美術館が企画・制作したオリジナル教材です。画材・木・紙・金属に大別されたBOXの引き出しに、実物資料が様々なテーマでビジュアルに並べられています。引き出しの数は全部で81個。絵具の原料や、道具の加工工程、素材の特徴などだけでなく、画材や素材そのモノ自体の独特の存在感と魅力にも気づくでしょう。そして、画材がどのように作られ、素材がこれまでどのように扱われてきたのか、現在の形に成り立つ過程や特性や表情などへの興味は、その周辺、つまり、人とモノをとりまく文化背景を知ることにつながっていきます。
モノを注意深くみていくこと、“見ること”から“視ること”へ視線を深めていけば、これまで人間が創造してきた多様な表現に対して、能動的に触れ合うことができるようになるかもしれません。本展で紹介する「画材と素材の引き出し博物館」を通して、視ることの楽しみを感じていただければと思います。