20歳で漫画の世界に足を踏み入れた谷口ジローは、1970年に漫画家デビューし、青年コミック誌、劇画誌を舞台としての活躍を経て、独自の世界を確立します。ハードボイルドやSF、格闘場面などの迫力ある絵から、市民の日常を丁寧に紡ぐ描写など、谷口の画業は留まるところを知らず、幅広い時空を漫画として展開し、新しい表現を次々獲得していきました。
『歩くひと』『遥かな町へ』『孤独のグルメ』『神々の山嶺』『晴れゆく空』『事件屋稼業』『「坊っちゃん」の時代』等々およそ40作の谷口ジローの作品が、これまでに20近くの言語に翻訳され、欧米・アジアの各国で出版されています。そして、それらの作品の多くはロング・セラーとして世界各国の書店の店頭を飾ります。谷口作品が、世界中の、また漫画ファン以外の読者にも愛され続ける理由は、いったい何でしょうか?
本展では、谷口ジローの創作を70年代の初期作品から未完の遺作まで紹介しつつ、「物語」「風景」「色彩」といったキーワードでも読み解いていきます。谷口ジローが描いた原画の美しい描線を通じて、その多彩な魅力の真髄に触れていただきたいと思います。