「ローカルヒーロー」は1980年代から発生し、全国に広がった地域キャラクターコンテンツの一例である。今日では日本各地に300例近くが存在し、地域に根差したキャラクターとして、地域の抱える社会問題、時事問題へ積極的に取り組む特徴的な活動を繰り広げている。ローカルヒーローの造形には、地域の特性や作り手の主張が表現された例が少なくない。
多くのローカルヒーローは顔を覆う仮面をつける。素顔を隠す彼ら異形の者に、なぜ人は憧憬を抱くのだろうか。この不可思議な感情は、おそらく現代に限られない。世界各地に普遍的に存在する伝統祭祀の来訪神は、多く異形の仮面の者たちである。また近世以来あまた描かれてきた時代劇の主役たちにも、多くの仮面を認めることができる。現代人が仮面のヒーローたちに感じる不思議な魅力は、こうした歴史的文化的背景の上に成立しているのではないだろうか。
本展示は現代の仮面文化の一つ、地域文化の一つとして、ローカルヒーローの造形物を捉える試みである。中にはステージ上での激しい戦いを経て、傷つき破損した造形物も含まれる。その傷こそ、ヒーローたちが地域のため、人々のために体を張ってきた証である。本展示がこの魅力的なコンテンツに新たな光を当てることになれば幸甚である。
城西大学経営学部准教授 石井龍太