現実と虚構が絶えず交じり合う流動的な境界面
気鋭の美術作家・冨安由真が劇場をはざまへと誘う
『KAAT EXHIBITION』は、現代美術と舞台芸術の融合による新しい表現を、劇場の独特な空間で展開するKAATならではの企画です。第5回目となる本展は、新進気鋭の現代美術作家・冨安由真による、虚構と現実が交錯する新作インスタレーション展示です。
冨安は、絵画、インスタレーション、ビデオなどによる多様なメディアを用いて、不可視なものに対する知覚を鑑賞者に疑似的に体験させる作品を制作しています。通常ならば演者が存在する劇場という場所において、「不可視なもの/確かでない存在」をテーマとする冨安が初めて挑む劇場での新作インスタレーションです。作家により人の存在を取り払われた劇場は、日常と非日常、虚構と現実が交錯する無限迷宮へと変貌します。鑑賞者は、「此処」と「何処か」が絶えず交換し続ける境界面へと誘われてゆく中で、自らも気づかぬうちに、気配や予感を鋭敏に感受する受容体へと変貌してゆくことでしょう。
冨安の作品をさまよう中で体験する「曖昧なもの・不確かなもの」との遭遇は、自分と世界に対する認識を一体どこへ運んでくれるでしょうか。刺激的であり、不思議とどこか懐かしさをも感じさせる冨安の作品世界をご体感ください。