美術館は絵を見るところ、そんな風に思っている方もいるかもしれません。でも全国には地域独自の文化を守っている美術館がたくさんあり、絵画だけでなくさまざまな分野の作品を展示しています。そして、石川県立美術館の特色のひとつが、工芸のコレクションです。
石川県には、江戸時代から受け継がれてきた工芸の豊かな土壌があり、その土壌に深く根付いた文化があります。当館は、石川の文化の結晶である地域ゆかりの作家の作品や、縁あってこの地に集った工芸作品を61年の長きにわたって収集・保存してきました。どんな時代でも、この石川の地で作り続けられてきた工芸があります。厳しい時代だからこそ、文化の灯を絶やさない。そんな思いでいま、石川の工芸をご覧いただきます。
総勢86名による展示作品93点のうちには、近現代工芸分野の日本芸術院会員(前身の帝国美術院会員を含む)14名と、重要無形文化財保持者(いわゆる人間国宝)37名の作品が含まれます。工芸の世界を通して、石川の文化の深みを感じ取っていただければ幸いです。