兵庫県を代表するやきものに、約800年の歴史を誇り、平成29年(2017)には日本六古窯の一つとして日本遺産に認定された丹波焼(丹波篠山市など)があります。平安時代末期に誕生した丹波焼は、鎌倉時代から室町時代には主として壺、甕、擂鉢といった実用品を生産しましたが、江戸時代にはさまざまな装飾技法を取り入れて、葉茶壺や水指など、茶の湯の道具も製作するようになりました。また、丹波の周辺では、江戸時代後期に有馬郡三輪村の明神山の麓に窯を開き、青磁を中心に染付や色絵など、磁器から陶器まで幅広くやきものを焼造した三田焼(三田市)が生産をはじめます。やや時期が遅れて、篠山城下では、青磁や白磁、染付、瑠璃釉など、多彩なやきものを生み出した王地山焼(おうじやま)(丹波篠山市)がほどなく活動をはじめます。このように、兵庫県内の窯場では、地域に根ざした伝統的な陶磁器が作り出され、それらは人々の生活と密接に結びついてきました。
本展では、近年、新たに当館の収蔵作品に加わった古陶磁を中心に、人々の暮らしとともに使われたやきもの、約90点をご紹介します。