アートコートギャラリーでは、具体美術協会 [ 以下「具体」。1954年 設立、1972年 解散] に在籍し、その後も長期にわたり先覚的な表現を探求し続けた4人の作家による展覧会「Small Works 1950s-2020」を開催いたします。
■企画趣旨
近年では、ニューヨークのグッゲンハイム美術館での大規模な回顧展(2013年)以来、具体の世界的な評価はさらに高まり、国際的な文脈で戦後美術を捉える展覧会に具体の作品を含める傾向も数多くみられます。
当ギャラリーは2003年のオープン以来、村上三郎をはじめ関西ゆかりのインターナショナルな作家として具体の作家に着目し、地域の文脈とも結びつけながら、ここ大阪から具体に所属した作家たちの活動を世界に向けて発信してまいりました。本展では、制作スタイルの異なる4人が具体を通して拓いた、孤高の世界観が凝縮された小作品群を中心に、展示を構成します。
■4作家と「具体」
具体の創設時からの会員である正延正俊は、最初期の具体で実験的な絵画やパフォーマンスが展開されるなかで、地道に抽象絵画を追求し独自の絵画世界を確立させました。1957年に来日したフランス人の美術評論家 ミシェル・タピエは、関西で具体に出逢いその活動を絶賛しました。翌年には初の具体海外展(ニューヨークほかアメリカ各地に巡回)が開催され、正延の作品も展示されました。この展覧会を皮切りに欧米で頻繁に具体の展覧会が催され、具体は国際的に広く認知されることになります。
具体の展示施設であるグタイピナコテカ(大阪・中之島)が開設された1962年に、前川強は同グループの会員となりました。前川は、穀物やコーヒー豆の運搬に使われるドンゴロス(麻袋)を絵画の支持体に加え、有機的なフォルムを隆起させ、絵の具を吹き流した作品で注目を集めました。第15回具体美術展(1965年)を機に迎え入れられた新メンバーのなかに、19歳の今井祝雄がいました。キャンバスの内側に既製品を仕込み表面に穴を穿った白のシェイプド・キャンバスの作品群や、電動モーターによって表面が動く作品に加え、早い時期から映像に取組むなど具体に新風を吹き込みました。
今井の参加と同年に、白髪一雄と長年親交が深く白髪と同じ日本画のバックグラウンドをもつ田中竜児が具体に参加し、1967年までメンバーとして活躍しました。日本画の技法と素材によって力強さのなかに静謐な佇まいのある大作に精力的に取組み、革新的な表現を展開しました。
■ 出展予定の作品について
本展は、4作家の新旧を交えた作品のコラボレーションとなります。
正延については具体に所属した1950年代・60年代の希少かつ貴重な作品を、田中については90年代の作品を中心に、小さな画面に様々な実験のあとがみられる作品群を、そして前川・今井については1970年代から最近作までを含め、展示を構成します。
何ものにも囚われない自由な創造の精神を支えに「未知の世界への果敢な先進」*を実践し続けた彼らの表現を通じて、本展がそのしなやかなエネルギーを伝える機会となれば幸いです。ぜひ本展をご紹介、ご高覧賜りますよう、お願い申し上げます。
* 吉原治良「具体美術宣言」『芸術新潮』1956年12月号より引用。「…すべて未知の世界への果敢な先進を具体美術は高く尊重する」
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