豊かな色彩で幻想的な世界を描いたマルク・シャガール(1887-1985)は20世紀を代表する画家のひとりです。帝政ロシア(現ベラルーシ)のユダヤ人家庭に生まれたシャガールは、故国ロシアを離れフランスで活躍するものの、第一次世界大戦、ロシア革命に翻弄され、第二次世界大戦中はアメリカに亡命するなど、その人生は決して平坦なものではありませんでした。しかし、生来の想像力をさらに飛躍させ、彩り豊かに表現した作品は、詩情と慈愛に満ち、今も世界中の人々に愛されています。
宇都宮美術館は、開館前から継続的に作品収集を行い、国内屈指の20世紀美術コレクションを誇る公立美術館です。とりわけシャガールについては、開館5周年、10周年という節目に油彩作品を収蔵するとともに版画集、版画挿絵本へと収集対象を広げ、その生涯を概観できるコレクションとなっています。
本展では、宇都宮美術館の珠玉のシャガール・コレクションから油彩画と版画連作『わが生涯』、『聖書』、『出エジプト記』、『ダフニスとクロエ』、『オデュッセイア』、『もの言わずして語る人』から選りすぐりの作品約160点を展示し、シャガールの豊饒なる絵画世界をご覧いただきます。