土木とは、道路や河川、橋梁、港湾などを造る建設工事のこと。東京のルーツである江戸は、幕府による天下普請を始めとする、さまざまな土木工事によって発展した都市でした。
江戸城と外濠・内濠の建設、日比谷入江、築地、深川などの埋立て、小名木川や神田上水といった運河や上水の整備、両国橋や日本橋などに代表される橋の架橋、寛永寺や増上寺といった巨大寺院の建設―。高度な土木技術による市街地の造成やインフラなどの整備は、江戸の町を人口一〇〇万を超える大都市へと導きました。
近年、東京では大規模な再開発が進み、渋谷駅周辺や日比谷などが注目を浴びています。しかし歴史をさかのぼると、実は江戸時代から、商業地の移転や再開発が度々行われてきました。新吉原のような遊廓や猿若町のような芝居町、わずか十数年で姿を消した幻の繁華街・中州などは、再開発エリアのルーツと言えるかもしれません。
こうした大規模な土木工事による江戸のインフラや建造物の様子は、浮世絵の中にもさまざまな形で描かれています。本展は歌川広重や葛飾北斎など、浮世絵師たちが描いた作品を手がかりとして、江戸の土木を読み解く展覧会です。