当館の古今東西にわたるコレクションから、音や音楽に関連する作品をご紹介します。これらは、楽器やそれを奏(かな)でる人物を直接描いたもの、あるいは画面の中に音楽的要素は見当たらないものの、タイトルや構図から音楽を彷彿(ほうふつ)とさせるものの、二種に大別されます。前者には、理想的風景を補完する一要素として奏楽の人物を取り入れた絵画や、歴史や伝説、文学などに取材することによって、楽器やそれを手にする画中人物が描かれた作品があります。一方後者には、音楽家との交流やある作曲家・楽曲から影響を受けた、実験的な構成の試みなどが挙げられます。これは、音楽と美術という2つの芸術の深い関わりから生まれた、20世紀以降の美術の一動向を示します。中でも、版画家・二見彰一は、詩や音楽に着想を得て、音楽家の名前や音楽用語を数多くの作品タイトルに応用しつつ、メロディーやリズムが画面からあふれるような、独特の詩的世界を築き上げました。
視覚に訴える美術、聴覚に訴える音や音楽。両分野の芸術が交錯するような、多様な音と音楽のある情景をお楽しみください。