イラストレーションと聞き、何を想像しますか。安西水丸の作り出すポップで爽やかな世界、宇野亞喜良の描く繊細で甘美な情景―みなさんの頭のなかには、様々なイメージが浮かぶのではないでしょうか。美術評論家の中原佑介が広大なイラストレーションという領域を考える上で、なによりもまず「世界地図」を「世界のイラストレーション」と例に挙げたことは、少し意外なことに感じるかもしれません。
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西洋における〈illustration〉は、印刷技術の発展とともに書物や雑誌と深く結びつき、社会や文化を映し出しながら歴史を重ねてきました。日本では1960年代以降、イラストレーターの活躍をきっかけとして独自の発展を遂げ、今日的な〈イラストレーション〉の概念が一般に定着したといえます。
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本展では当館コレクションより、中世の彩飾写本や16世紀の世界地図、現代のポスターまで、イラストレーションをめぐり、幅広い時代の作品を展観します。現代日本の〈イラストレーション〉の源泉ともいえる〈illustration〉の実体、日本の多彩な〈イラストレーション〉を生んだイラストレーターの存在を探りながら、その可能性を紐解きます。