本展は、継承するやきものに焦点を当てた展覧会です。
2019年に、京都と萩の伝統ある陶家で改名と襲名が行われました。京都では十五代樂吉左衞門(1949-)が樂直入(じきにゅう)に改名し、長男の篤人(あつんど)(1981-)が十六代を襲名しています。萩では十二代三輪休雪(きゅうせつ)(1940-)が三輪龍氣生(りゅうきしょう)に改名し、弟の和彦(1951-)が十三代を襲名しました。樂家は桃山時代に長次郎が千利休の思想のもと樂茶碗を創始して以来、約450年にわたって一子相伝で技法を伝え、樂茶碗を現代に継承させてきました。一方、三輪家は長州藩の御用窯として江戸時代前期から続いてきた萩焼の名門陶家で、歴代、休雪の名前を継承し、萩焼の技法を伝えています。
有田では代表的な窯元として十四代今泉今右衛門(1962-)と十五代酒井田柿右衛門(1968-)が伝統の色絵磁器を継いでいます。今泉家は、佐賀・鍋島藩の藩窯で作られた色絵磁器「色鍋島」において、代々赤絵師を務めました。廃藩後に素地作りから焼成まで一貫した色絵磁器の生産に取り組み、今右衛門として現在まで色鍋島を受け継ぎます。酒井田家は日本で初めて磁器の上絵付に成功したと伝えられ、江戸時代前期から有田を代表する色絵磁器の窯元として活動してきました。濁手(にごしで)と呼ばれる乳白色の白磁胎に余白を大きく残して描かれる左右非対称の色絵を特徴とします。
本展では今泉今右衛門、酒井田柿右衛門、三輪龍氣生、樂直入の作品を、菊池コレクションを中心に展示し、継承するやきものに表す制作者の挑戦と創意のかたちを紹介します。また、十五代樂吉左衞門の初期を代表する個展「天問」に出品された作品20点余りを、菊池コレクションから一堂に展示いたします。