1965年にアーティストとして活動を開始して以来、ダン・グレアムは常に時代の最先端を走り続けてきました。視覚芸術の枠組みに収まりきれないその個性的な作品は、近年欧米を中心に高い評価を得ています。
グレアムは、60年代中頃、コンセプチュアル・アートの先駆けとなる言葉や図表を用いた作品を、雑誌等の印刷メディアに発表しました。多くのアーティストたちがパフォーマンスやランド・アートの作品をフィルムやビデオに記録していた70年代、彼はそれらを単に記録媒体として用いるのではなく、鏡やビデオモニターと組み合わせることで、独特の視覚体験をもたらすインスタレーションを生み出しました。
このインスタレーションは、彼の建築への強い関心と一体化し、80年代初頭、「パヴィリオン/彫刻」という彼独自の作品形式へと発展しました。ミニマル彫刻として外部から鑑賞できるだけでなく、建物として内部に入ることも出来るこれらのガラスの家(パヴィリオン)は、光の状態次第で透明にも鏡面状にもなるハーフ・ミラーの働きにより、実に多彩で豊かな表情を見せてくれます。
「ダン・グレアムによるダン・グレアム」展は、そのタイトルが示すとおり、作家自身の意向が強く反映された展覧会です。最初期の作品から新作に至る、このアメリカ人作家40年の歩みが一望できるだけでなく、本展覧会のために新たに制作された2つの大型パヴィリオンも展示されます。