琵琶湖の東側に位置する湖東・東近江地域は、古代から繊維の生産を行っており、中世以降はここの織物が近江上布として近江商人の取り扱う随一の商品となるなど、非常に上質な麻織物の産地として知られています。時代の流れの中で機械化や化学繊維の隆盛に押されながらも、今も伝統工芸として受け継がれています。また、同じ東近江市にある永源寺地区は、木の加工を行う職人集団、木地師の生まれた里であり、かつて織布産業で使われていた糸車には、木を回転させながら加工していく木地師の技術が応用されています。現代まで受け継がれてきた技術には、直接的ではないにしろ、たしかに東近江独自の血が流れているのです。
今回の展示では、こうした織物の町の一つである能登川を会場として、綿々と続いていくものと、そこにある密やかながらも必然的な関係をテーマに、滋賀にゆかりある3人の若手作家、小宮太郎、武田梨沙、藤野裕美子による新作を中心とした展覧会を開催します。
◎滋賀近美アートスポットプロジェクトについて
滋賀県立近代美術館は、リニューアル整備のための長期休館に入っていますが、この休館の期間を利用し、県内様々な地域で美術館の活動を展開する試みを行っています。「アートスポットプロジェクト」はその一環として、滋賀県にゆかりある若手作家を中心に紹介するとともに、開催する地域の方と交流・協働を目指すプロジェクトです。2018年より毎年開催しており、第3回目の今年は、東近江市能登川で開催します。