大正ロマンを代表し、画家として広く知られる竹久夢二(1884-1934)。岡山で生まれ、詩人を夢見て上京した夢二は「文字の代わりに絵の形式で詩を描いた」作品が評価され絵描きとして世に出ました。初めての著作『夢二画集 春の巻』での絵と言葉を融合させた独特の抒情性は、たちまち当時の若者を中心に絶大な支持を集めます。以降絵画や挿絵、版画、デザイン、詩句、文章など様々な分野で活躍しましたが生涯を通してその表現には「言の葉」がともにありました。詩人・萩原朔太郎は「竹久夢二氏は明治の歌麿で、抒情詩を絵でかいた新しい古人の元祖でせう。」と評し、当時の夢二の表現が懐かしさの中にも新しさを感じさせ、人々の心をつかんでいたことがわかります。夢二はセノオ楽譜シリーズで二七〇点余りの装幀(デザイン)を手がけ、大正七(1918)年に発行し唱歌として大流行した「宵待草」では歌詞も担当し詩人としての評価も高めました。本展では当館の珠玉のコレクションから詩を書くように描いた絵画、版画、デザイン、楽譜の数々を言葉とともに展観し、詩人画家・竹久夢二のつむいだ「言の葉」の世界をご覧いただきます。