本展では草むらを徹底して写実的に描く木寺渡氏(きでら・わたる1956-)の絵画世界と当館収蔵品の中から植物を描いた画家たちの作品をご紹介します。
木寺氏の作品は荒草が画面いっぱいに描かれています。強い日差しが落とす葉陰、茂みが抱え込む熱気、まるで実際の草むらに分け入ったかのようです。一つ一つの植物の個性が丁寧に描かれ、どこにでもある草むらは生命力に満ちた緑の世界となり、見るものを圧倒します。宇城市在住の木寺氏は30歳頃から絵を描きはじめ、当初は観葉植物やユリを描いたり、分割して構図を作ったりしていました。その後、描きたいものが見つからない日々が続いたある日、近所の川のほとりで陽の光に照らされた葛(くず)をカメラに収めます。よく見ると葉や茎とその影の対比が面白い構図を作っているのに気づき、これを描いてみようと思ったのが現在の作風になったきっかけといいます。
今回の展覧会では木寺氏の作品20点に加え、それぞれの表現で植物の魅力を伝える画家たちの作品約30点を展示します。時に思いもよらない驚きや発見を描き出す画家のまなざしを感じながらお楽しみいただければ幸いです。