明治28(1895)年、静岡市の中心部に生まれた芹沢銈介。東京高等工業学校工業図案科を卒業後、静岡県工業試験場や大阪府立商品陳列所に勤め、個人的にも様々なデザイン活動をしていました。その20代は大正時代にすっぽりと収まります。海外の美術やデザインの動向に強い興味を持ち、おしゃれでモダンな感覚の中に青年期を過ごしたのが芹沢でした。
一方、商家の大店に生まれた芹沢は、日本の伝統をこよなく愛した人でもありました。20代のころから始めた収集も、芹沢を深く日本の伝統に結び付けていたといえます。
染色家としてデビューしてからも、「和」の親しさと「洋」の新しさを融合して、現代日本に違和感なく溶け込むデザインを数多く世に送り続けました。特に戦後間もなくから始めた型染したカレンダーは、季節感あふれる日本のモチーフを多くとり入れながらも、モダンな感覚に貫かれ、国内だけでなく、海外でも高い人気を博しました。型染によるクリスマスカードも、日本の雪国のモチーフに英文のメッセージを違和感なく組み合わせた、和と洋を融合した代表的な仕事といえます。
本展覧会では、そのほかにも、ブックデザイン、パッケージデザインなど、250点におよぶ品々を展示します。なつかしくて新しい芹沢デザインの世界を、どうぞ心ゆくまでお楽しみください。