1959年宇都宮市に生まれ、1982年ヴィジュアルデザイン研究所を卒業後、フリーデザイナーとして活動していた小板橋弘は、20代半ばに日本画に開眼し独学で絵画表現を模索する中、作画に集中するため、1991年いわき市川前町に移住。電気も電話もない大自然の中での生活に覚悟を決めて向き合い、デザイナー時代に培った感性や技術と日本の伝統技法とを融合させた「新しい風景表現」を探求し作画生活を続けました。結婚を機に北茨城市関本町に移住しましたが、いわき市との美術を通したつながりは現在もなお深く続いています。
手すきの和紙に墨や岩絵具で描かれた海、空、山の姿は、現代社会の利便や喧騒を離れ、孤独ともいえる環境で己を研ぎ澄ましていった作者のたどり着いた「桃源郷」のように感じられる風景の数々は、穏やかで静寂で凛としていて、時にユーモラスでもあります。
本展では、最新作を含む16点の作品により、どこかにありそうで今にも手の届きそうな「別天地」に、静かに心を遊ばせる機会を提供したいと考えます。