気品に満ちた美人画を描き続け,凛とした女性美を繊細な筆致で見事に表現した上村松園。近代日本美術史の中で極めて高い評価を受けているその清澄な絵画世界は,今日もなお作品としての強い生命力をそなえ,多くの人々に深い感銘を与えています。
松園は,明治8(1875)年,京都・四条に生まれました。幼少時から画技に秀で,京都府画学校に進学,やがて鈴木松年,幸野楳嶺,竹内栖鳳に師事して天賦の才に磨きをかけていきます。早くより数々の展覧会で受賞を重ね,明治33(1900)年の第9回日本絵画協会・第4回日本美術院連合絵画共進会に出品した《花ざかり》が大家に伍して銀牌となり,画壇に認められました。以後,浮世絵や能の世界を独自に解釈した佳品等を次々と発表,画家としての確かな足跡を残していきます。昭和16(1941)年に帝国芸術院会員となり,昭和23(1948)年には女性として最初の文化勲章を受章しています。
平成15(2003)年は,松園が家業の葉茶屋を閉め画家として完全に独立してからちょうど100年となります。この記念すべき年に開催する本展では,松園の初期から晩年にいたる作品に素描や下図を加え,さらに実際に創作の現場で用いられた筆や印章など作品誕生の息吹きを今に伝える貴重な資料も併せて展示することで,その芸術にかけた厳しい研鑽の足跡を追いながら,「真実の松園像」に迫ります。
この展覧会では,代表作を含む,上村松園の初期から晩年までの日本画約70点,素描・下図約30点を展示します。