存在の実感を支える重要な要素となる空間と時間の感覚。
津田道子は空間把握と時間把握に関わる知覚の操作によって人間の認識能力の危うさや、その危うさゆえにかいまみることのできる幻想の豊饒さについて考え続けてきた。津田の得意とする、鑑賞者をいわば「共犯者」として展示の要素にとりこむインスタレーション。「誰かの知覚が把握した空間」という、常に鑑賞者の視線と動作によって揺らぎ続ける不可視の存在を示唆する津田の作品は、変化し続ける仮想空間の「記憶」を「記録」としてとらえるための装置なのである。
今回発表される新作インスタレーションは、鏡や映像、テキストピースといった、これまでも津田が好んで用いてきた素材を組み合わせる内容となる。マウントフジアーキテクツ設計の個性的な展示空間のなかにおかれた津田のインスタレーションが、訪れた鑑賞者の視線の交錯を誘導するその先に現前するのは、三つの時制を有する時間概念もしくは迷路にも似た三次元の空間となるのだろうか。あるいは鏡と映像に映し出される「自分」の姿なのだろうか。今回の展覧会タイトルにこめられた「三者対話」という言葉の意味をより深く考えさせる参加型・体験型の新作展示が予定されている。