江戸時代、幕府の街道整備によって江戸の日本橋から京都の三条大橋まで東海道が開かれ、往来盛んな大動脈が誕生しました。そうした状況の中で東海道の様子を紹介した「東海道名所図会」などの名所絵や旅案内などの出版が相継ぐとともに、十返舎一九の「東海道中膝栗毛」が江戸の世に大流行し、空前の旅ブームを生み出しました。
歌川広重(1797-1858)は浮世絵でその旅の様子を大胆かつ克明に描き出し、「東海道五拾三次」を刊行。江戸っ子の憧憬をかきたて、大ヒットを記録しました。
その後も広重は幾度となく東海道を題材として描きましたが、「保永堂版」「丸清版」は、16年ほどの期間をおいて描かれたシリーズです。同じ宿場町を描いていても、構図や色数、登場人物が異なり、出版元の個性や時代の雰囲気が色濃く反映されています。本展では、「東海道五拾三次」の保永堂版と丸清版計110点を同時に展示し、2つの異なる構図で表現された東海道をめぐります。また、大正時代に撮影された宿場町の様子も併せて紹介します。是非この機会に広重の豊かな発想力や描写力とともに彫師、摺師の優れた技にもご注目頂けましたら幸いです。