彫刻による抽象作品で国際的に活躍した彫刻家 辻晉堂(つじしんどう)(1910-81)の生誕110周年を記念する展覧会を開催します。
鳥取県日野郡溝口町二部村(現・西伯群伯耆町二部)に生まれた辻晉堂は、1933年に写実に基づく力強い肖像彫刻を日本美術院展に発表して一躍脚光を浴び、彫刻家としてのキャリアをスタートさせました。戦後に京都市立美術専門学校(現・京都市立芸術大学)の教授に就任してからは、イメージに基づく抽象的な造形を目指す一方、やきものづくりが身近な京都という土地柄もあって、「陶彫」と呼ばれる陶土を用いた彫刻作品を手がけはじめました。既存の概念に捉われないその造形は、ヴェネツィア・ビエンナーレなど海外でも高い評価を獲得、また同時代の陶芸家たちにも大きな影響を与え、やきものと彫刻の領域を横断する新たな表現の地平を切り拓いたといえます。
本展では、辻が陶彫を制作した京都時代に焦点を当て、第29回ヴェネツィア・ビエンナーレ出品作をはじめとする陶彫作品と版画・素描作品から、その表現の世界をご紹介します。