平松画伯は20代の頃、一時期山登りに夢中になった時期がありました。日本の二千メートル級の著名な山をほとんど踏破していながら、富士山には一度も登頂したことがないそうです。日本の美の象徴でもある富士山は、他の山と一線を画す特別な存在という意識があったのかもしれません。
富士山は、その存在感や優美な姿から、これまで多くの画家によって描かれてきました。それ故に作家のオリジナリティや技量が問われる難しいテーマであるといわれます。平松画伯も幾度となく対象に向き合い、時にはダイナミックに時には清閑な富士を描いてきました。
近年では、フランス印象派とジャポニスムの研究から日本美の真髄を様式美の中に見出し、独自の装飾的な表現で「かざり」をまとった華麗な富士を制作しています。
今回の展覧会では、日本の四季の風物とともに描かれた数々の富士を展示いたします。