新春の開催となる本展では、日本人の暮らしをいろどってきた、趣味や芸道の世界の一端を、特別出陳作品と館蔵品でご紹介します。
まず、(花を飾る)と題したコーナーでは、室町時代の花伝書や、江戸時代の「立花図屏風」(華道家元池坊総務所蔵)と豪華絢爛たる「花車図屏風」(真正極楽寺[真如堂]蔵)をご覧いただきます。大名家の広大な床の間に、こうした花車が飾られることもあったと伝えられています。折り取った花を瓶にさすという行為を、芸道の域にまで磨き上げた人々もさることながら、それを大人の嗜みとして習得するたくさんの人々がいたからこそ、華道は護り伝えられてきました。
つづいて〔古画を味わう〕のコーナーでは、江戸時代の古画鑑定の様子を、狩野探幽が残した縮図をとおして眺め、最後の〔鉄砲をきわめる〕では、鉄砲術の華麗な秘伝書をとりあげます。17世紀のはじめに越前藩主松平忠直が手に入れた秘伝書は、金銀の源氏絵に彩られたものでした。実戦で鉄砲が使われていた時代のものですが、きな臭さを徹塵(みじん)も感じさせない書物です。
往時の大人の嗜みは、そのまま現代に通じるものではありませんが、そこに、これからの暮らしを豊かにするヒントがひそんでいるかもしれません。 (担当 泉万里)