文字は、思いを人に伝えたり、重要な事柄を後世に伝えたりするためになくてはならないものです。文字が残されることにより、いしにえの出来事やいのしえの人々の願いや祈り、細やかな感情を窺い知ることができます。美しく書かれた文字、「書」は古くより鑑賞の対象ともなり、愛でられてきました。また、書はしばしば絵とともに表され、書が絵の魅力を、絵が書の魅力を引き出し、より深い世界が表現されてきました。本展観では、文字の魅力に満ちた文書や書状、写経や写本、書の美しさを究めた墨蹟や古筆、そして書と絵が麗しく協奏する作品を展示します。
特集陳列では、桃山時代から江戸時代初期に活躍した書の名人で、寛永の三筆と呼ばれる近衛信尹(このえのぶただ)(1565~1614)、本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)(1558~1637)、松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)(1584~1639)の作品を展示します。腕をふるった鑑賞用の書や日常の顔をのぞかせる親しい人への書状には、寛永の三筆それぞれの特色があらわれています。特に鑑賞用の書には、雄渾な近衛信伊の書、豊麗な本阿弥光悦の書、端正な松花堂昭乗の書といったそれぞれの書の個性を巧みに引き立てる装飾がなされた紙(料紙)が用いられており、料紙に描かれた絵や文様と書の見事なコラボレーションが見所です。 (担当 宮崎もも)