私たちは、日常生活において、様々なものに対して「かわいい」という言葉を使います。道ですれ違う犬や猫、近所で出会う子ども、テレビで見かけるアイドル、お気に入りのデザインのマグカップや洋服、はたまた老人の外見や仕草にも…。しかしながら、この言葉は一体どういう意味なのでしょうか。「かわいい」は、1970年代後半より、ファッションや漫画、アニメなどのいわゆる「サブカルチャー」において頻繁に用いられ、1990年代以降、海外においても多くのファンを獲得しました。現代では、「kawaii」は、「日本文化」を表わす言葉として英語の辞書にも掲載され、欧米を中心に国際語として定着した感さえあります。弱く、守るべき、支配される存在にこの語が使われる一方、「かわいいは正義」、「かわいいは無敵」のように、この特性を備えたものが圧倒的な力をもつことさえある不思議なものです。それらは、美術においてどのように表現され、私たちはそこに何を見出すのでしょうか。
本展では、ふくやま美術館のコレクションから、日本美術や西洋美術、平面や立体などの区分を超え、「かわいい」という感性により選ばれた作品を展観します。「小さきもの(未熟なもの)」、「素朴さ(プリミティヴ)」、「シンプルな形」、「きもかわ」という「かわいい」を感じさせる4つの項目に分け、作品を通してこの言葉の意味を探るとともに、この感性を媒介として作品を見つめ直します。