平山郁夫は、1968年から日本文化の源流を求め、仏教伝来の道でもあるシルクロードを旅し、平和を祈りながら描き続けた、戦後を代表する日本画家であります。平山の長きにわたる画業の中で、シルクロードの取材は150回を超えるほどであり、これらの旅を行う中で画家は改めて日本の素晴らしさに気付き、1990年代以降、平成に入ってからは数々の「日本の風景」を描いてきました。本展は、そうした日本を題材とする作品の中から、伝統的な社寺などをテーマに展示し、あわせて画家自身の後年の活動であった「文化財保護活動」についても紹介します。
本展の前半では、平山郁夫が描く「日本の古社寺と信仰」をテーマとして、当館所蔵の古都・京都を描いた《平成の洛中洛外》(右隻)をはじめ、世界遺産の熊野参詣道で知られる初公開の《熊野路(古道)》(早稲田大学図書館蔵)、またシルクロード作品と並行して描かれた《善光寺》・《東大寺の夜》・《日光東照宮》(佐久市立近代美術館蔵)など、主に平成時代に描かれた本画作品を中心に展示し、またこれまでに紹介されることの少なかった朝日生命保険相互会社所蔵の素描《吉備路》・《熊野路》シリーズなども公開します。また、本展の後半では「文化財保護」をテーマとし、平山郁夫が文化財保護に関わった地として、高句麗古墳、敦煌、バーミヤン、アンコールワットなど、ここでは当館所蔵の平山作品の本画や素描を交えながら展示します。