大正から昭和にかけて日本の工芸界は、昭和2年帝展に工芸部門が設置されるなど、大きな変革期を迎えました。若手の工芸家の間では、技術一辺倒ではなく工芸の本質を見極めようとする意欲的な活動が見られるようになり、特にその牽引力となったのは金工作家たちでした。
香川県出身の彫金家・大須賀喬(1901~1989)は、東京美術学校卒業後、そのような活動のひとつ、金工家集団「工人社」の創立メンバーとなりました。喬は生涯を通じて、日々のスケッチから生まれる、昆虫や植物をモチーフに作品を作り続けました。そして金属という無機質な素材を用いながらも、動的で柔軟なイメージあふれる作風で、帝展・文展・日展を中心に活躍しました。
一方、喬の息子・選(1931~)は、日本金工家協会を設立するなど主に日展で活躍、自由な創作活動を目指しながら、近年「技法」というものを再認識し、現在は日本伝統工芸展などで活動しています。
本展では、父子の代表作品約100点を展示、二代にわたって継承される金工の伝統技術と、それぞれの目指す独自の造形世界を紹介します。