令和という新しい時代を迎えた日本。今年は実に55年ぶりに東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。 この大イベントの開催を記念して特別展「山口蓬春と祭典 -東京オリンピック-」を開催します。
東京オリンピックが開催される3年前の昭和36年(1961)、山口蓬春(1893-1971)はオリンピック東京大会組織委員会が設置した「芸術展示特別委員会」の委員に就任しました。そして、戦後復興からの大きな経済成長を遂げた日本でのオリンピックの成功と、日本の芸術文化の推進に貢献しました。東京オリンピックが開催されるこの昭和39年(1964)に、画業の絶頂期にあった蓬春に、皇居の最高の儀式を行う宮殿松の間杉戸絵の制作という、画家としてもっとも栄誉ある仕事が依頼されます。この杉戸絵の制作は、蓬春の画業のひとつの転換期ともいえる新しい日本画創造への道を拓き、翌昭和40年(1965)、蓬春は栄えある文化勲章を受章することになりました。
今回の展覧会では、蓬春が長い画業の中で描いてきた作品、ならびにコレクションの中から、オリンピックのテーマでもある「宴」「競い」「祭り」といったテーマでお楽しみいただきます。まず、「宴」のテーマでは、第3回新日展に出品され、酒杯(しゅはい)を高々と捧げ持つ三体の埴輪を題材とした《宴》(昭和35年〔1960〕、神奈川県立近代美術館蔵)とその周辺を、さらに、「花の宴」ともいうべき、《瓶花》(昭和40年〔1965〕、当館蔵)などの気品漂う蓬春の花卉(かき)図の魅力をご紹介いたします。次に、「競い」では小野小町、細川ガラシャなど蓬春が描いた美人の系譜を。そして、最後の「祭り」では《十二ヶ月風俗図》(16世紀、当館蔵)より京の街の復興とともに、町衆の手によって再興された活気あふれる「祇園祭」の姿をご覧ください。