朝香宮邸が生まれた時代、モダンライフは始まった―――
本展は、1933年に竣工した朝香宮邸(現・東京都庭園美術館本館)の魅力を紹介する、年に一度の建物公開展です。これまで当館では、建物の歴史や室内のディティール、建設に関わった人びと、修復内容など、毎年異なるテーマを設けつつ、多様な角度から建物公開展に取り組んでまいりました。2020年の開催となる今回は、この邸宅建築が生まれた時代・都市である、1930年代の東京に焦点を当てます。
1930年代の東京―――1923年の関東大震災によって江戸・明治の面影を失いながらも、「帝都復興」の掛け声のもと近代都市としての新しいスタートを切った地。華々しい震災復興記念祭とともに幕を開けたこの時代は、ガラスと鉄筋コンクリートの近代的な建築が立ち並び、地下鉄が走り、モダンな衣服に身を包んだモガ・モボたちが銀座の街を闊歩しました。やがて戦争の惨禍にさらされるまでのわずかな間に、日本の都市文化の中心地として花開いたのです。現代の東京に繋がる都市の原型が形作られた時代と言っても過言ではなく、今にも通じるモダンなライフスタイルの萌芽を見て取ることができます。
本展では、東京都の所有する作品・資料―絵画や家具、写真、雑誌、衣服など、分野を横断する多彩なコレクションの紹介を通して、朝香宮邸が生まれた時代の、モダン都市・東京の在り様を描き出すことを試みます。東京に今なお確かに息づいている、“モダンの息吹”を探ります。